月次BAST景況レポート 2026年10月号
TKC月次指標(月次BAST)は、全国の中小企業の月次決算データをもとに、景況動向と経営体力を多角的に分析する指標です。 なお、月次BASTは毎月、すべての対象年月について再集計を行うため、同じ対象月でも、次回以降の公開時には数値が変わる場合があります。 TKC月次指標(月次BAST)は、TKC会員事務所による月次巡回監査と月次決算を経た、25万社超の月次決算データを集計した統計資料です。業種、売上規模、地域、業歴等の切り口から、地域経済や中小企業の動向を確認できます。 地域や業界の最新動向を把握するために、ぜひ月次BASTをご覧ください。 TKC月次指標(月次BAST)のサービス詳細、利用登録(無料)はこちらから 全体サマリ 業種別・地域別の状況(売上高(前年比)100%以上の企業割合) 今月のピックアップ指標:営業利益当年の営業利益が黒字である企業の割合を業種別に比較  近年、中小企業を取り巻く経営環境は、原材料価格や人件費の上昇、人手不足の深刻化等により、厳しさを増しています。また、こうした影響は、需要動向、価格転嫁の状況及び費用構造等によって異なるため、企業の収益状況も業種による違いが生じていると考えられます。  月次BASTでは、各月の営業利益について、前年と当年の黒字・赤字の組合せにより、「前年が黒字、当年も黒字」「前年が赤字、当年は黒字」「前年が黒字、当年は赤字」「前年が赤字、当年も赤字」の4区分で表示しています。今回は、このうち、「前年が黒字、当年も黒字」と「前年が赤字、当年は黒字」を合わせた、当年の営業利益が黒字である企業の割合に着目し、月次BASTの収録企業数が多い6業種について、その推移を全産業と比較します。 ※2024年8月から2026年7月までのうち、9つの年月について、当年の営業利益が黒字である企業の割合を表示しています。 ポイント  2024年8月から2026年7月までの推移を見ると、当年の営業利益が黒字である企業の割合はいずれの業種でも月によって変動しており、多くの業種で上昇又は低下する時期がおおむね共通しています。一方、当年の営業利益が黒字である企業の割合の水準や変動の大きさには、業種による違いが見られます。特に、「宿泊業、飲食サービス業」は、他の業種と比べて変動が大きく、2025年8月には約70%まで上昇する一方、2026年2月には約40%まで低下しています。  なお、月次BASTでは、当年の営業利益が黒字である企業の割合について、グラフに示した業種別の推移だけでなく、売上規模別の推移も確認できます。2026年6月に黒字となった企業の割合は、「0.5億円未満」の41.6%に対し、「5億円以上~10億円未満」では52.2%となっており、10.6ポイントの差が見られます。 専門家の解説  今月のデータでは、売上高が前年を上回る企業の割合は前月から上昇しています。一方、限界利益率が前年以上となった企業の割合は前年同月を下回り、直接人件費も前年を上回っています。売上環境に改善がみられるなかで、それをどの程度利益につなげられているかを併せて見ることが重要です。  今回の業種別比較で興味深いのは、当年の営業利益が黒字である企業の割合に共通した変動がみられる一方、その水準や変動の大きさには業種による違いがあることです。企業は共通の景況やコスト環境に直面していますが、需要の変化、費用構造、価格転嫁のしやすさなどは業種によって異なります。そのため、黒字企業割合の変化についても、経済全体に共通する要因と、業種固有の要因の双方から考える必要があります。  さらに、収益環境を把握するうえでは、一時点の当年の営業利益が黒字である企業の割合だけでなく、企業が黒字・赤字の間をどのように移行しているかを見ることが重要です。同じ当年の営業利益が黒字である企業の割合であっても、赤字から黒字へ転じる企業が増えている局面と、黒字から赤字へ転じる企業が増えている局面では、その意味は大きく異なります。月次BASTが持つ「黒字継続」「赤字から黒字」「黒字から赤字」「赤字継続」という情報を継続的に見ることで、中小企業の収益環境が改善方向にあるのか、悪化方向にあるのかをより明確に捉えることが期待できます。 専門家プロフィール 柴本 昌彦 教授 神戸大学経済経営研究所 教授 研究分野·研究課題 ·国際金融政策 ·マクロ経済政策効果及び政策対応に関する実証研究 略歴 大阪大学大学院経済学研究科博士課程修了。 神戸大学経済経営研究所講師、同准教授を経て、2022年より神戸大学経済経営研究所教授。 現在は、神戸大学計算社会科学研究センター副センター長・データ分析部門長及び神戸大学経済経営研究所地域共創研究推進センター副センター長を務める。
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