2025年04月01日

会社のリスク対応をチェックしよう

会社のリスク対応をチェックしよう

💡この記事のポイント
 ☑経営者の死亡等リスクには「生命保険」で備える!
 ☑災害や情報漏洩等のリスクには「損害保険」で備える!
 ☑倒産等の不測の事態のリスクには「三共済制度」で備える!

 

 企業経営にはさまざまなリスクが存在します。そうしたリスクに適切に対応できなければ、企業を継続することが難しくなり、役員・社員やその家族、取引先等にさまざまな影響を与えることになります。そうした企業経営を取り巻くリスクとその対策、また企業の存続に役立つ3つの共済制度についてご説明します。

1.会社のリスクにはどのようなものがあるの?

 中小企業経営には多くのリスクが伴います。具体的には、下記のようなリスクがあります。

 

①経営者の健康リスク

 経営者の死亡や就業不能:経営判断の遅延、事業継続の困難など。

 

②自然災害リスク

 ・地震、津波、台風:施設の損壊、業務の停止など。
 ・感染症:従業員の健康被害、業務の停止など。

 

③サプライチェーンリスク

 ・供給途絶:原材料の不足、物流の停止など。
 ・取引先の倒産:仕入れ先や販売先の倒産など。

 

④コンプライアンス・法務リスク

 ・法令違反:罰金、訴訟など。
 ・知的財産権の侵害:特許権や商標権の侵害など。
 ・機密情報の漏洩:データの不正アクセスなど。

 

⑤サイバーセキュリティリスク

 ・マルウェア攻撃:システムのダウン、データの破壊など。
 ・データ漏洩:顧客情報の流出など。
 ・ID・パスワードの不正入手:不正アクセスによる個人情報等の流出被害など。

 

⑥人事・労務リスク

 ・労働災害:従業員の怪我や死亡など。
 ・メンタル不調:過労やストレスによる精神的な問題など。
 ・過重労働:長時間労働による健康被害など。

 

⑦経営戦略リスク

 ・経営判断のミス:市場の変化に対応できない、競争力の低下など。
 ・資金計画の失敗:資金繰りの悪化、投資の失敗など。
 ・経済危機:景気の悪化、貿易摩擦など。

 

⑧財務リスク

 ・資金繰りの悪化:売上の減少、取引先の倒産など。
 ・負債の増加:借入金の返済が困難になるなど。
 ・為替リスク:為替変動による損失など。

 

⑨オペレーショナルリスク

 ・業務運用ミス:生産ラインの停止、品質問題など。
 ・人材流出:重要な従業員の退職など。
 ・リコール:製品の欠陥による回収など。

 

⑩市場リスク

 ・市場環境の変化:競争の激化、顧客ニーズの変化など。
 ・景気の悪化:消費の低迷、売上の減少など。

 

⑪技術リスク

 ・技術革新の失敗:新技術の導入失敗、技術の陳腐化など。
 ・システム障害:ITシステムのダウン、データの消失など。

 

 こうしたさまざまなリスクから企業を防衛するためには、適切なリスクマネジメントが重要です。リスクの洗い出し、定量化、対応方法の決定などのプロセスを通じて、リスクを最小限に抑えることが求められます。

2.経営者の死亡リスクにはどう備えればいいの?

リスクのイメージ図

(1) 経営者が死亡すると何が起こるのか

 万一、経営者が死亡してしまった場合、リスクとしてまず考えられるのが、重要な経営判断ができなくなることです。特に中小企業では、経営者が多くの意思決定を一手に引き受けていることが多いため、事業運営が滞るおそれが高まります。
 また、経営者がトップセールスを担っている場合、その不在は売上の減少に直結します。特に、顧客との信頼関係が経営者個人に依存している場合、その影響は顕著です。さらに、経営者が顧客対応や取引先との交渉を直接行っている場合、その不在の間に売上低下や取引先からの支払い遅延が発生し、資金繰りに支障をきたすリスクも高まります。
 社員にとっても、経営者が死亡すると「会社は大丈夫なのか?」と不安を感じ、社員の士気が大きく低下する可能性も生じます。

(2) どんな手を打てばいいの?

 経営者が死亡し、次に誰が経営者の役割を担うのか決まっていない企業では、事業継続が困難になるケースもあります。まずは、日ごろから食事や睡眠に気を使い、定期的に健康診断を受けるなど、健康でいることが重要です。
 しかし、それでも不測の事態が生じ、経営者が亡くなるリスクはゼロにはなりません。そのため、仮に経営者が亡くなっても、当面の営業を続けるための資金確保が必須であり、そのためには経営者が生命保険に加入しておくことが大切です。こうした備えをしておくことで、経営者不在時の売上減少や固定費の支払いだけでなく、残された家族の生活費等に充てることができます。

3.自然災害や情報漏洩などから会社をどうやって守るの?

情報漏洩を防止しているイメージ図

(1) 自然災害に対する備え

 自然災害が起きても事業を継続するためには、災害時に被る損害を最小限に抑え、かつ迅速に事業を再開するためのリスクマネジメントが必要です。いつ、どこで発生するかわからないからこそ、日ごろからの備えが重要です。以下に、具体的な対策とそのポイントを紹介します。

 

①リスク評価と分析

 

 企業が直面する可能性のある自然災害の種類とその影響を評価します。これには、地震、台風、洪水などが含まれます。リスク評価では、災害の発生確率と影響の大きさを分析し、優先順位をつけます。

 

②事業継続計画(BCP)の策定

 

 事業継続計画(BCP)とは、災害時に事業を継続または迅速に再開するための計画です。具体的には、以下の要素が含まれます。
 ・代替オフィスの確保:主要な業務を継続できる場所を事前に確保します。
 ・重要データのバックアップ:データの損失を防ぐため、定期的にバックアップを取ります。
 ・緊急連絡網の整備:従業員や取引先との連絡手段を確保します。

 

③従業員の安全確保

 

 従業員の安全を最優先に考え、避難訓練や防災教育を定期的に実施します。また、災害時の安否確認システムを導入することも有効です。

 

④防災備蓄品の準備

 

 オフィスに水や食料、毛布などの防災備蓄品を用意しておくことが推奨されます。これにより、帰宅困難者が発生した場合でも対応できます。

 

⑤調達先の分散

 

 部品や資材の調達先を複数確保することで特定の供給元が被災した場合でも事業を継続できます。

 

⑥損害保険の活用

 

 自然災害による損害をカバーするための保険に加入することも重要です。これにより、経済的なリスクを軽減できます。

(2) 情報漏洩等のリスクに対する備え

 企業が保有している顧客情報等が漏洩してしまうと、企業経営に深刻な影響を与える可能性があります。具体的には、信用の低下、金銭的損失、法的責任の3つが大きな問題となり、最悪の場合は事業存続が難しくなることもあります。
 企業がこうした情報漏洩を防ぐためには、例えば下記のような方法が考えられます。

 

①外部からの攻撃対策

 

 セキュリティソフトの導入:マルウェアやウイルスからシステムを守るために、最新のセキュリティソフトを導入します。

 

②人為的ミス対策

 

 メールの誤送信を防ぐためのルールを策定したり、情報の持ち出しに関する厳格な社内規定・ルールを設けます。

 

③内部不正対策

 

 定期的に情報セキュリティに関する教育を実施し、従業員の意識を高めたり、従業員と守秘義務契約を締結し、情報漏洩のリスクを減らします。

 

④システムの脆弱性対策

 

 システムの脆弱性を定期的に確認し、必要なアップデートを行います。

 

 こうした対策に加え、万一情報漏洩が生じたときに備えた損害保険に加入することで、リスクを大幅に減らすことができます。

4.中小企業経営の強い味方「三共済制度」

三共済制度のイメージ図

 三共済とは、国(独立行政法人)が運営する共済制度であり、①小規模企業共済、②倒産防止共済(セーフティ共済)、③中小企業退職金共済(中退共)の3つの制度のことを指します。それぞれ中小規模の法人・個人事業主の方は節税手段としてもよく使われる制度です。

(1) 小規模企業共済

 小規模企業共済とは、小規模な会社の経営者や役員、個人事業主向けの積み立てによる退職金制度です。役員の方が会社を退職された時や、個人事業主が事業を辞めた際に、その後の生活や事業再建のための資金を準備しておくことができます。また、その掛金については個人の税金に対する節税効果があります。

 

①加入資格

 

 常時使用する従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主、または会社役員、または商業・サービス業に該当する個人事業主の共同経営者です。

 

②掛金

 

 月額1,000円から70,000円の間で、500円単位で選択することができます。納付方法については、月払い・半年払い・年払いが可能です。また、掛金は増額、減額、前納することもできます。掛金は全額、小規模企業共済等掛金控除として所得控除を受けることができます。前納をした場合などにも、一年間支払った掛金を全額控除するこができます。一方で、事業の経費にすることはできません。

 

③共済金の受取

 

 解約した際に積み立ててきた共済金は、いずれ受け取ることができます。金額は、解約理由や契約者の立場によって変わります。掛金納付月数が240か月未満で解約をした場合、受取額は掛金を下回ってしまいます。具体的な受取額の計算は中小機構のHP等で確認できます。また共済金を一括で受け取るか分割で受け取るか選択することが可能で、基本的には一括で受け取った場合は退職所得、分割で受け取る場合は雑所得となります。

(2) 中小企業倒産防止共済(セーフティ共済)

 倒産防止共済とは、取引先が倒産した際に連鎖倒産を防ぐための共済制度です。無担保・無保証人で借入を行うことができ、掛金は会社または個人事業の経費として損金にすることが可能です。また、解約の際には解約手当金を受けることができます。
 以下の要件に該当し、一年以上事業を継続している中小企業者が加入することができます。

業種資本金または出資の総額常時使用する従業員数
製造業、建設業、運輸業その他3億円以下300人以下
卸売業1億円以下100人以下
サービス業5,000万円以下100人以上
小売業5,000万円以上50人以下
ゴム製品製造業3億円以下900人以下
ソフトウェア業3億円以上300人以下
旅館業5,000万円以上200人以下
 

①掛金

 

 掛け金は月額5,000円から20万円の範囲内を5,000円単位で選択することができ、掛金総額が800万に達するまで積み立てることができます。また小規模企業共済と同様に前納、増額、減額(※条件あり)が可能です。払込掛金は法人の損金、個人事業の必要経費に算入することができます。まとめて前納した場合も全額支払をした期の経費とすることができます。

 

②解約手当金

 

 解約した際の手当金については基本的に掛金を12か月以上納めていれば掛金の8割以上、40か月以上納めていれば全額を受けることができますが、解約の理由により支給率が変動します。具体的な金額については中小機構のHP等で確認ができます。

 

③借入について

 

 倒産防止共済に加入すると、取引先が倒産し、売掛金など債権の回収が困難な場合に、倒産防止共済より無担保、保証人なしで借入を受けることができます。借入額は、「被害額」と「掛金総額の10倍」のいずれか少ない方の額までとなります。また、取引先の倒産がなくても、資金が必要となった場合には解約手当金の95%までの額を一時的に借入することもできます。

(3) 中小企業退職金共済

 中小企業退職金共済制度(以下、中退共制度)は、主に中小企業の常用労働者を対象とした退職金共済制度で、独力では退職金制度を設けることが難しい中小企業について、事業主の相互共済の仕組みと国の援助によって退職金制度を設け、中小企業で働く方々の福祉の増進を図り、中小企業の振興に寄与することを目的としています。 また、独立行政法人勤労者退職金共済機構では、毎年10月を「中小企業退職金共済制度の加入促進強化月間」として、厚生労働省等関係省庁の後援、関係機関及び事業主団体等の協力の下、加入促進及び履行確保の推進や制度の周知等に積極的に取り組んでいます。 加入することができる条件は以下の通りです。法人だけでなく、個人事業主でも加入することができます。

業種加入要件
一般業種常時従業員数300人以下、または資本金・出資金3億円以下
卸売業常時従業員数100人以下、または資本金・出資金1億円以下
サービス業従業員数100人以下、または資本金・出資金1億円以下
小売業常用従業員数50人以下、または資本金・出資金5,000万円以下
 

①加入

 

 中退共へ加入した企業の従業員は原則全員加入対象者となりますが、試用期間中の従業員や短時間労働者、休職中の従業員などは加入させる必要はありません。

 

②掛金

 

 毎月の掛金は5,000~30,000円の範囲16通りの中から従業員ごとに選択することができます。週30時間未満の短期労働者の場合、2,000円、3,000円、4,000円の中から選択することもできます。

 

③掛金の増額

 

 掛金の増額については届出を出すことでいつでも変更することができますが、減額する場合は従業員の同意が得られた場合と現在の月額掛金を継続することが困難であると厚生労働大臣が認めた場合のみ掛金の減額をすることができます。

 

④税額控除

 

 企業や事業主が支払う掛金については全額法人の損金、個人事業の必要経費に算入することができます。前納した場合も全額支払をした期の経費とすることができます。

 

⑤国からの援助

 

 新規で中退共に加入すると加入後4か月目から1年間、掛金の半分(従業員ごとに5,000)円まで)国からの助成を受けることができます。また、月額18,000円以下の従業員の掛金を増額する場合、増額分の3分の1を1年間分、国からの助成を受けることができます。ただし20,000円以上の掛金月額からの増額は助成の対象にはなりません。

 

⑥退職金

 

 支給される退職金については従業員の加入期間によって変動します。納付月数が11か月以下の場合支給はされず、12~23か月では掛金を下回り、24~42か月で掛金相当額となります。43か月以降は運用利息などが加算され、長く加入をしていた従業員ほど有利に退職金を受けることができます。

5.TKC全国会に所属する税理士等の支援

 企業存続のためには、経営者の死亡や自然災害等による損害に備え各種保険に加入する、あるいは共済制度等を利用することが大切です。しかし、適切な保険金額の算定あるいは制度の理解は簡単ではありません。例えば、生命保険金の保険金について、必要金額以上の生命保険を契約すると毎月過大な掛金を支払うことになり、資金繰りが苦しくなります。逆に必要金額に達していないと、会社も家族も守れず、意味がなくなってしまいます。
 そこで頼りになるのが税理士・公認会計士です。税金の申告等のために会計事務所と顧問契約を結んでいる中小企業がほとんどだと思いますが、会計事務所の中には、万一の場合に必要となる資金額を計算し、過不足のない保険加入を指導してくれるところがあります。一般的に、税理士はクライアントの事業実態や月々のキャッシュフロー、さらに役員報酬や家族構成まで把握しているため、万一の場合に必要となる資金を正確に計算できるのです。
 例えば、税理士・公認会計士の任意団体であるTKC全国会では、「企業防衛制度」という名称で適切な生命保険指導を、「リスクマネジメント制度」という名称で適切な損害保険指導を行っています。また、三共済制度についても加入を勧めています。詳細は下記Webサイトをご覧ください。

 

TKC全国会のご紹介 | TKCグループ

株式会社TKC出版

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株式会社TKC出版

 1万名超の税理士および公認会計士が組織するわが国最大級の職業会計人集団であるTKC全国会と、そこに加盟するTKC会員事務所をシステム開発や導入支援で支える株式会社TKC等によるTKCグループの出版社です。
 税理士の4大業務(税務・会計・保証・経営助言)の完遂を支援するため、月刊誌や映像、デジタル・コンテンツ等を制作・提供しています。